最近思うこと
ステロイド
ぼくは現在、アトピー性皮膚炎にかかっている。最近は涼しくなってきたせいか、症状はだいぶ落ち着いてきている。しかしこの夏はひどかった。毎晩からだがかゆくて眠れないし、ちょっと汗をかくとかゆみを通りすぎて、身体中が痛くなった。これはたぶん、ステロイドを止めたからだ。
ステロイドというのは、アトピー性皮膚炎に対する代表的な塗り薬で、症状を抑えるのに適している。ぼくがはじめてこの薬を使ったときは素晴らしい薬だと思った。今までかゆくて眠れなかったのが、一回ステロイドを塗っただけで朝まで熟睡できたのだ。しかしこのステロイドというのは曲者で、長期間使用しつづけると、からだの抵抗力を失っていくのである。最悪の場合は失明に至る場合もある。だからといって急にステロイドの使用を止めると、からだの抵抗力が低下しているので“リバウンド”といって、症状が今までよりひどくなることがある。
このことを知ったぼくは極力ステロイドを使わないようにしようと思った。今までは毎日塗っていたのを、まず一日おきにして、それから一週間に一回……といったふうにして、最終的にステロイドと決別しようと思い、実行した。しかしそれが裏目に出たのか、症状は悪くなる一方だった。皮膚の色が黒ずんできて、顔もむくんできた。そして「どうせステロイドを塗っても良くならないのなら……」と思い、ステロイドを塗るのを一切やめた。するとやはり一週間くらいすると、リバウンドがでてきた。とにかくひどく、腕や首を動かすこともままならなかった。
アトピーの患者が来ると、まず100%近くの皮膚科の医者はステロイドを出してくるだろう。ステロイドは確かに症状を抑えるのには最適な薬かもしれない。しかし、アトピーを治す薬のようには感じない。あくまで症状を抑えるだけにしか過ぎず、ステロイドで症状が抑えられているうちに、体質などが変わってアトピーが治ってくれたらラッキー、というような薬だと思う。ステロイドを塗っていればアトピーが必ず治るという保証はないのだ。確かにステロイドを塗ってアトピーが治った人もいるだろうけど、それはステロイドのお陰じゃなくて、患者自身が治したんだと思う。身の回りを清潔にするように努力したのかもしれないし、食生活に気をつけたのかもしれない。たまたまステロイドを塗ってるあいだに治っただけだ。
「私はこれでアトピーを克服した!」みたいな広告をよく見かけるけど、あれもあまり当てにならない。だいたい本人かどうかも分からないし、これもステロイドと同じで、たまたまそれを使っているあいだに治っただけかもしれない。しかしステロイドにしろ、これらにしろ、アトピーの原因が分からないのだから、ある程度仕方がないところもあると思う。でもステロイド以外のもので、副作用があるというのはまだ聞いたことがない。逆にいえば、ステロイドには副作用があるのが分かっているということだ。だったら、どうせ効くか効かないか分からないものなら、副作用のあるステロイドを使用するのは避けるべきだと思う。
ぼくは医学的な知識はあまりないので責任はもてないけど、もしあなたがアトピーじゃないかと思うのなら、皮膚科に行くまえに漢方医にでも相談することをお薦めする。もし、それでもダメだったら皮膚科に行ってみたらどうだろう。
ぼくが初めてステロイドを使ったときには、このような知識はまったく無かった。そしてステロイドのことを知って、皮膚科医に「ステロイド無しでアトピーは治せないのか?」と聞いたところ「ステロイド無しでは今より良くなることはない。」と近所の医者は言った。しかし、最近は何とかステロイドを塗り始める前より、穏やかになってきている。だけどアトピーが治ったかというと、まだ治っていない。まだ、顔や手に炎症が残っている。そもそもアトピーになった原因が分かってないので、炎症が消えても、治ったかどうかという判断はできない。このことがアトピーの治療を難しくしている原因のひとつでもある。
こんなことならステロイドなんて使うんじゃなかった、と思っている。それから、このことがあってから何でもまず疑ってかかる、イヤな性格になってしまった。一体どうしてくれるの?ねぇ。
10/20/1996