最近思うこと
アマガサキ

阪神尼崎駅前

以前、友人に「愛県心のないヤツ」と言われたことがある。確かにそうかもしれない。ぼくの住んでいる尼崎市は兵庫県にある。だが大阪府との県境にあって、三宮に行くよりも梅田に行くほうが近い。だからいつも買い物などに行くときは、いつも大阪に行っていた。神戸に行くといえば、幼いころ親戚のうちに行くときぐらいだった。しかも尼崎は兵庫県でありながら、市外局番が大阪と同じ (06) なのだ。しかし「愛府心」があるかと言えばそうではない。

この前クラスメイトに「尼崎ってなんか異様なとこやなぁ」といわれた。そのクラスメイトは県境を挟んでとなりの豊中市に住んでいる。いくら府県が違うからといって、となりの市でそんなに違うのだろうか。ぼくは1年半ほど尼崎を離れたことがあるが、特別変わったところだとは思わなかった(その1年半暮らしていたところが、川崎というどことなく尼崎に似ているところだったからかもしれないけど……)。

そういえば関西では尼崎のことを「アマ」と呼ぶことが多い。関西のなかで愛称のある地域というのは珍しい。そういった点では変わっているのかもしれない。

そういう土地柄のせいか尼崎には芸人さんがたくさんいる。ぼくと同じ中学出身で吉本に行った人が、知っているだけで三人いる。松本人志・浜田雅功(ダウンタウン)、富好真(ちゃらんぽらん)の三人だ。

それから、この前「走らなあかん 夜明けまで」という映画をテレビでやっていた。これは大阪を舞台にした映画だったけど、その中のあるシーンのロケ地が尼崎だった。また、尼崎にはミナミの難波と同じ字を書いて「なにわ」と読む地域がある。尼崎にはこういった大阪以上に大阪らしい部分もあるみたいだ。

尼崎には工業都市、公害都市といった一面もある。小学校と中学校の両方の校歌の歌詞に「工」という文字がはいっている。小学校は「場の町に続く海」で中学校は「伸びゆく都尼崎」という具合だ。小学校のそばには森永の工場があった。小学生のときに社会見学に行ったこともある。天気が悪くなって風向きが変わると、いつも甘〜い香りがしてきた。それとちょっと話しがずれるけど、ほかにも天気が悪くなると大阪空港に着陸する飛行機の航路が、うちのちょうど真上になって、とてもうるさい。ぼくは子供のころから、こういった工業的なもので天気の変わり目を感じていた。

ところで尼崎には鉄道の路線が6つある。JRの東海道線と福知山線、阪急の神戸線と伊丹線、そして阪神の本線と西大阪線、の以上6本だ(駅はないけど山陽新幹線を含めると7本)。そして今度これにもう1本加わる。1997年3月8日にJR東西線が開通する。この東西線とはJR尼崎から京橋のほとんどの区間を地下でつなぐ路線だ。これに伴い、東海道線のすべての快速・新快速が停車するようになる。鉄道好きのぼくとしてもとても嬉しいし、ふるさとが発展していくのはそれ以上に嬉しい。

しかし、ぼくの住んでいる辺りでは、どんどんマンションが建ってきているが、市全体でいえば人口が減ってきている。一時は50万人以上あった人口も、いまは40万人台に割り込んできている。海浜地域の工場が閉鎖されたり、南部が都心化してきて人の住むようなところではなくなってきているからだろう。JR尼崎駅前にキリンビールの工場があったけど、この夏に閉鎖された(このときに尼崎の地図がプリントされた、超ローカルなビールが出まわった)。JR尼崎駅前はキリンビール工場跡地も含め、東西線開通にあわせて再開発が行われている。そのほかにも市内では復興事業と合わせ、数ヶ所で土地開発が進んでいる。

単なる御国自慢になってしまったかもしれないけど、ぼくはこんな尼崎が好きだ。ぼくには「愛県心」はないけど「愛市心」がある。将来、尼崎以外の地域に暮らすことはないだろう。

9/30/1996